消費者契約法

各自治体の消費生活相談窓口には、毎日たくさんの相談、苦情が寄せられており、その中でも圧倒的に多いのは契約に関するものです。契約というと、一見特別なことのように思いますが、「電車に乗る」「洋服を買う」などといったことも実は事業者と消費者との契約です。

今後も消費者契約紛争の多発が予想される情勢の中、それらの紛争の予防や適正な解決を目的として、2000年4月、『消費者契約法』が制定されました。(『消費者契約法』は、平成13年4月1日以降に結ばれた、事業者と消費者の間の契約すべてがその対象となります。)

『消費者契約法』の概要

不実告知

事業者が勧誘の際、事実と異なることを告げ、消費者が告げられた内容を事実と誤認して契約を結んだ場合。

「当センターの派遣する家庭教師は東大生です。」との勧誘で契約したが、派遣された家庭教師は東京OO大学の学生であった。

断定的判断

事業者が勧誘の際、確実ではない情報を確実なものと誤認させる判断を消費者に提供し、それに基づいて契約を結んだ場合。

「過去のデータから見て、円高にはなりません。」と言われて外債を買ったが、円高になった。

不利益事実の不告知

事業者が勧誘の際、重要事項やそれに関連した事項について有利となる旨を告げ、かつ重要事項について消費者にとって不利益となる事実を知りながら、故意に消費者に告げず、それにより契約した場合。

「日当たり良好」という業者の宣伝につられて住宅を購入したが、半年後に家の前に高層マンションが立ち、日当たりが遮られてしまった。業者はマンションの建築計画をしっていたのに何も告知しなかった。

消費者が誤認に気づいたときから6ヶ月以内、かつ契約締結のときから5年以内ならば消費者は契約締結の意思表示を取り消すことができます。

不退去

事業者が勧誘の際、消費者から住居や職場などから退去してほしいという意思を示されたにもかかわらず、それらの場所から退去せずに、消費者が困惑したまま契約を結んだ場合。

退去妨害

事業者が勧誘の際、勧誘している場所から消費者が退去したいという意思を示したにもかかわらず、その場所から退去させず、消費者が困惑したまま
契約を結んだ場合。

「見るだけでいいから」と言われて営業所について行き、説明を聞かされた。途中で帰りたいと言ったのになかなか帰してもらえず、結局高い化粧品を購入した。

消費者が困惑の状態から脱したときから6ヶ月以内、かつ契約締結のときから5年以内ならば、消費者は契約締結の意思表示を取り消すことができます。

取消しをする場合の手続き

消費者契約法で取消しをする場合、内容証明郵便等で事業者へ契約を取り消す旨の通知を送り、それが相手に到達した時点で取消しとなります。取消しができるのは、消費者契約法により取消権が生じた消費者(場合によっては代理人・承継人・保佐人など)に限られます。

契約にあたって

不適切な勧誘により不本意な契約を結ぶことを避けるためにも、また、そうした契約を結んでしまった場合に消費者契約法に規定された消費者の権利を有効に活用するためにも、契約前に事業者に積極的に質問をし、必要な調査をさせ、回答を文書で引き出すことが肝心になってきます。
あいまいな回答やいいかげんな調査をする事業には要注意です。
また、訴訟となった場合に備えて、回答文書には、回答期日と回答社名を明記させることも大切です。


神奈川県弁護士会・港都綜合法律事務所