個人民事再生(マイホームを手放さないで借金整理)給与所得者等再生・小規模個人再生

個人民事再生とは?

個人民事再生は、小規模な負債を抱えた個人の方が、生活を再建し再出発するために有効な手段です。
給与を減給されたり、リストラされたり、家族が重篤な病気になり多額な医療費がかかったり…人生には様々な転機があり、突如として生計が維持できないような事態に陥ることがあります。
十分に計画を練って組んだはずの住宅ローンの返済に四苦八苦する可能性は誰にでもあります。
そうした住宅ローンを抱えて経済的に困窮している方が、住宅を手放すことなく負債を整理することができる手続が個人民事再生です。

対象

支払い不能に陥るおそれが生ずるに至ったものの、継続的な収入の見込みのある個人の債務者。
収入がない方は利用できません。無職でも年金や家賃収入がある場合は利用できます。アルバイト、パートタイマーの方も利用できます。
また、負債総額(住宅ローン以外の借金)が5000万円を超えている場合には利用できません。

メリット

破産しないで、総債務額の相当部分を免除し、残った債務を原則3年間で分割返済することにより再生を図ります。

デメリット

住宅ローンは原則減額されません。

弁護士に依頼して債務整理手続に入った時点で、新たな借り入れができなくなります。新たな借り入れは信義に反する行為となり、返済の意思がないのに借金したとみなされて、詐欺罪に問われることもありえます。

官報に掲載されます。
(ただ、これに掲載されても周りの人に知られることは少ないと思われます。)

また、任意整理・破産・特定調停・民事再生すべてに共通しますが、弁護士を介した債務整理を行うことにより、信用情報機関へ事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録される可能性があります。
このことにより、貸金業者・信販業者・銀行等からの借り入れやクレジットカード作成の与信審査に通らなくなる可能性が高まりますが、一定期間(一般的に5~7年間)経過すれば手続をとることにより情報は抹消されるようです。

手続き

給与所得者等再生と小規模個人再生の2種類の手続があります。
いずれも、住宅資金特別条項をつけると、住宅を失わないで経済的再生を果たすことが可能になります。
また、清算価値保障の原則といって、返済額は、破産手続をとった場合に債権者に支払うことになる金額(配当額)以上でなければなりません。

給与所得者等再生

対象

給与所得者

弁済額

可処分所得の2年分以上を原則3年で返済すれば残った債務は免除されます。
可処分所得とは、収入から生活費、所得税、住民税、社会保険料などを差し引いた額のことです。
民事再生法第241条第3項の額を定める政令に基づき計算しますので、居住地域や年令によって異なります。

メリット

再生債権者の同意は不要です。
下記の小規模個人再生の場合、再生計画に同意しない債権者数や債権額が法定の要件を満たすと、再生計画が不認可となり、破産手続に移行するリスクがあります。
したがって、債権者数が少数だったり、1社が大半の債権額を占めていて、反対しそうな場合は、債権者の同意がいらない給与所得者等再生を検討するとよいでしょう。

デメリット

可処分所得が多いほど債務圧縮率は悪くなります。
返済額が多くなり、返済原資も必要なので、厳しい再生計画になる可能性があります。

小規模個人再生

対象

個人事業者と給与所得者

弁済額

債務額の5分の1または100万円のいずれか多い額以上を返済すれば残った債務は免除されます。

メリット

子供の進学費用、医療費、社会保険料の滞納などがある場合は、再生債務者の事業または生活を考慮して計画を立案できるという利点があります。
また、給与所得者等再生では可処分所得で計算すると弁済額が高額になるため、給与所得者の方もこちらを選択することが多いです。

デメリット

再生債権者の同意が必要です。
提出した再生計画に対して債権者が書面決議を行います。
したがって、再生債権者に反対されて再生計画が不認可となり、破産手続に移行するリスクがあります。
再生債権者が同意してくれそうな場合はいいのですが、政府系金融機関や一般債権者は異議を出してくる場合が少なくないようです。

個人民事再生を検討されている方へ

個人民事再生は、他の借金整理の手続と比べると、少し複雑な内容になっていますので、弁護士や司法書士といった専門家に相談されるとよいでしょう。
すぐに依頼をしないにしても、専門家に相談して、どのような手段をとりうるのか知っておくことで、過剰な不安を抱くことを回避できます。
たとえ個人民事再生手続がとれなかったとしても、任意整理や自己破産などの手続を検討すればいいので、思いつめないようにしてください。
法的手続をとり、生活を再建し再出発された方は、たくさんいらっしゃいます。
まずはお気軽にご相談ください。


神奈川県弁護士会・港都綜合法律事務所